バラの香り「フェニルエタノール」の抗うつ効果と攻撃性を抑える効果

抗うつ効果のあるバラの香り成分「フェニルエタノール」

バラに含まれる香り成分フェニルエタノールに抗うつ効果があることが、川崎医療福祉大学医療技術学部の上野浩司講師(臨床検査学科)らの研究グループによって突き止められました。

フェニルエタノールは、バラは香料や化粧品の成分としても使われますが、抗うつ効果が明らかになりました。また、以前からハチの攻撃性を抑える効果も知られています。

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バラの香り「フェニルエタノール」の抗うつ効果と攻撃性を抑える効果の目次

1.フェニルエタノールに抗うつ作用が!

川崎医療福祉大学医療技術学部の上野浩司講師(臨床検査学科)と、川崎医科大学 精神科学教室、中村学園大学短期大学部 食物栄養学科らの共同研究グループによって、フェニルエタノールを吸わせたマウスは、ストレスのある環境下でも、うつのような状態になりにくいことが突き止められました。

今後、フェニルエタノールがうつ病などの精神疾患の新しい医薬品や治療法の開発につながる可能性があると期待されています。

この研究成果は、論文名「Anti-depressive-like effect of 2-phenylethanol inhalation in mice.」にまとめられ、2018年11月8日、フランスの英文科学雑誌「Biomedicine & Pharmacotherapy」(バイオメディシン&ファーマコセラピー)の電子版に掲載されました。

「Anti-depressive-like effect of 2-phenylethanol inhalation in mice」の抄録

今回のナールスエイジングケアアカデミーの編集部ニュースでは、このフェニルエタノールの研究の結果をご紹介します。

また、以前から知られていたミツバチやスズメバチの攻撃性が抑えられたというフェニルエタノールのはたらきも取り上げます。

さらに、フェニルエタノールを含むバラ成分のエイジングケアの効果についてもご紹介します。


2.バラの主要な香り成分「フェニルエタノール」って?

香り成分「フェニルエタノール」を含むバラ

1)フェニルエタノールの基本情報

フェニルエタノールとは、フェネチルアルコールまたはフェニルエチルアルコールとも呼ばれる芳香のあるアルコールです。

性状は液体で無色です。

アルコールには溶けますが、にはあまり溶けない性質があります。

フェニルエタノールは、ダマスクローズセンチフォリアローズなどのバラ、カーネーション、ヒヤシンス、アレッポマツ、イランイラン、ゼラニウム、ネロリ、キンコウボク などといった植物の精油に含まれています。また、日本酒、ビール、ワインなどにも含まれてその香りに影響を与えています。

2)フェニルエタノールの効果と使われ方は?

フェニルエタノールは、心地よい香りからストレスを減らすリラックス効果があることが知られていました。また、抗菌作用もあります。

フェニルエタノールは工業的にも合成することが可能で、バラの香りを演出したり、タバコなどに添加して消臭剤としても使われます。

また、アルカリ性に強いことから石鹸の保存料としても使われます。

さらに、スズメバチの忌避作用があることが発見されています。

ほかにも、フェニルエタノールは、日本の悪臭防止法で、嗅覚を用いて臭気の有無を判定する人が正常な嗅覚を持つかの検査に使用する「基準臭液」の1つとしても使われています。

このようにこれまでも、フェニルエタノールはさまざまな生活の場面で利用されてきたのです。

そんなフェニルエタノールに抗うつ効果があることが、わかったのです。

3)フェニルエタノールの製造法は?

フェニルエタノールの製造法は大きく2つあります。

1つは、塩化ベンジルにシアン化ナトリウムを反応させたのち水酸化ナトリウムでフェニル酢酸へ誘導し、これをエステル化したのちナトリウムで還元する方法です。

もう1つは、ベンゼンからエチレンオキシドと塩化アルミニウムの存在下でのフリーデル・クラフツアルキル化反応により合成する方法です。

一般の方にとっては、フェニルエタノールの製造法はなじみがないと思いますが、人為的に作れるようになっているのです。


3.フェニルエタノールの抗うつ効果、どうやってわかったの?

フェニルエタノールの抗うつ効果について考える女性

従来から、バラの香りが人間のストレスホルモンの分泌を抑えるはたらきを示す研究成果が報告されていました。

しかし、どの成分がどう作用しているかは明らかになっていませんでした。

そこで、今回は、川崎医療福祉大学医療技術学部の上野浩司講師(臨床検査学科)らの研究グループが、フェニルエタノールに着目し効果を実験で確かめました。

実験は、密閉空間で15分間フェニルエタノールを吸わせたマウスと、何も吸わせていないマウスを比べたものです。

それぞれのマウスを10匹ずつのグループに分けて、ともにしっぽをそれぞれテープで固定し、逆さずり状態にして10分間放置しました。

この2つのグループのマウスについて、うつ傾向を示す行動であがくのをやめて動かなくなる「無動時間」の長さを測定しました。

その結果、フェニルエタノールを吸わせたマウス10匹では、約6分~6.5分で動かなくなりました。

一方、フェニルエタノールを吸わせないマウスが動かなくなる時間は、平均約8分間でした。

この結果を、研究グループは「フェニルエタノールがストレスを緩和させ、抗うつ作用を発揮することを示した実験結果」と分析しています。

また、今後「メントールやかんきつ類の果皮に含まれるリモネンなど、バラ以外の香り成分についても、精神状態にどう影響を及ぼすか調べたい」とコメントしています。


4.フェニルエタノールのハチの攻撃性を抑える効果

1)ミツバチへの2―フェニルエタノールとリナロールの効果

Morgane Nouvian氏たちが発表した「Appetitive floral odours prevent aggression in honeybees」という論文では、花の匂いの成分である2―フェニルエタノールとリナロールで、ミツバチの攻撃性が抑えられたという結果を報告しています。

この研究成果は、養蜂家がミツバチの巣を平静に保つのに役立つ可能性が期待されています。

2)スズメバチへの2―フェニルエタノールの効果

2―フェニルエタノールを含む液体を霧吹きでスズメバチにかけると、人を刺すなどの攻撃行動をしなくなったという結果を高知大学の金哲史教授(化学生態学)らが、「日本応用動物昆虫学会大会」で発表しました。

スズメバチにはもともと警報フェロモンを発して仲間を呼び寄せる、人などを集中的に攻撃する性質があります。

しかし、2―フェニルエタノールを感知すると攻撃行動が抑えられ、仲間が近づかなくなったそうです。

こうしたフェニルエタノールの効果が、人のアンガーマネジメントでも発揮できれば良いですね。


5.バラ成分のフェニルエタノール以外のエイジングケア効果

フェニルエタノールは、ローズウォーターでは全体の70%以上を占めています。

だから、バラの香りや効果は、フェニルエタノールの影響が大きいのです。

とはいっても別の成分も。

バラの成分には、フェニルエタノール以外にもゲラニオールやネロール、シトロネロールなどが含まれています。

つまり、バラの成分による保湿効果や抗菌効果は、フェニルエタノールだけの力ではないのです。

<参考記事>

バラに関する記事をご紹介します。

ノイバラ果実エキスの5つの効果で美肌になる!化粧品成分の使い方

イザヨイバラエキスの化粧品成分としての効果と安全性

カニナバラ果実エキスはどんな化粧品成分


6.フェニルエタノール以外のニオイの記事

ナールスエイジングケアアカデミーでは、香りやニオイに関して、フェニルエタノール以外でもいくつか掲載しています。

ニオイはフェニルエタノールのようなプラスにはたらくなら上手に活かしたいですし、マイナスなら消したいですね。

ぜひ、次の記事も参考にしてくださいね。

気になる「夏のニオイ」は旅行先で!アンケート調査と対策のコツ

枕のニオイが臭くない男性が実践する頭皮対策!マンダムの調査だけ?

加齢臭はエイジングケア世代の女性も気をつけよう!


7.編集部コメント

フェニルエタノールの日本の研究結果をご紹介しました。

また、フェニルエタノールを含むバラを取り上げました。

私たちの周りに身近にあるバラ。

今回、バラに含まれる香り成分フェニルエタノールに抗うつ効果があることが発見されました。

一方、すでにリラックス効果や香りを生かして、香料やエイジングケア化粧品などのコスメにも使われています。

また、以前からフェニルエタノールがハチの攻撃性を抑える効果もしられていたので、その研究もご紹介しました。

この成分には人に役立つさまざまなはたらきがあります。

フェニルエタノールと聞いても一般のエイジングケア世代の女性にはピンとこないかもしれませんが、知らないうちに使っていることもあります。

だから、知識をもっておくことも良いことだと思います。

今後、フェニルエタノールが健康やアンチエイジング、医療や医薬品の分野でも応用されるようになればよいですね。

<本記事の執筆>

株式会社ディープインパクト 代表取締役 富本充昭

ナールスエイジングケアアカデミー編集長

京都大学農学部を卒業後、製薬企業に7年間勤務の後、医学出版社、医学系広告代理店勤務の後、現職に至る

医薬品の開発支援業務、医学系学会の取材や記事執筆、医薬品マーケティング関連のセミナー講師などを行う。

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