ケラトヒアリン顆粒とは、表皮の顆粒細胞にあるガラス質状の顆粒です。
バリア機能を守るフィラグリンのもととなるたんぱく質で、光を屈折させて紫外線から肌を守るはたらきがあります。
この記事では、ケラトヒアリン顆粒とは何か、またそのはたらきをご紹介します。
- ケラトヒアリン顆粒は、表皮の顆粒層にあるたんぱく質です。フィラグリンの前駆物質であるリン酸化したプロフィラグリンです。
- ケラトヒアリン顆粒は、角質へ移動するとフィラグリンに分解されます。そして、アミノ酸に分解され、天然保湿因子(NMF)の主成分として利用されます。
- ケラトヒアリン顆粒は、肌のターンオーバーの過程を通してバリア機能を守ります。しかし、化粧品によるスキンケアやエイジングケアではアプローチできません。
- ケラトヒアリン顆粒には、光を反射して紫外線が肌の奥に入るのを防ぐはたらきがあります。ただし、これで紫外線対策が不要になるわけではありません。
- ケラトヒアリン顆粒と関係の深い病気として、アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬があります。
京都大学農学部卒医薬品業界歴30年以上の専門家の執筆記事
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読みたいところから読める目次
1.ケラトヒアリン顆粒と美肌の関係を知りたいあなたへ
「ケラトヒアリン顆粒とは?バリア機能を支え紫外線から肌を守る!」をお届けします。
今回のテーマは、美容マニアでもあまり知らない肌に関する成分。
理解するのが難しいので、多くの美容やコスメ、スキンケアの話では登場することはありません。
しかし、ケラトヒアリン顆粒は表皮にあるたんぱく質で、美肌のためにとても大切です。
肌を守るバリア機能を支えたり、紫外線ダメージを軽減させるはたらきがあります。
正しいスキンケアやエイジングケアのためには、皮膚の仕組みや肌にある成分のはたらきを理解することが大切です。
この記事では、ケラトヒアリン顆粒とは何かについて、またその成り立ちやはたらきをご紹介します。
また、皮膚の病気との関係についても取り上げます。
「ケラトヒアリン顆粒って、一体、何?わかりやすく教えて!」
「ケラトヒアリン顆粒のはたらきは?肌に大切なの?」
「ケラトヒアリン顆粒はなぜ紫外線ダメージを防ぐの?」
「肌悩みや皮膚の病気との関係は?」
「化粧品によるスキンケアやエイジジングケアで対策できるの?」
などが知りたい方は、ぜひ、続きをチェックしてみてくださいね。
2.ケラトヒアリン顆粒とは?
1)ケラトヒアリン顆粒はたんぱく質
ケラトヒアリン顆粒は、表皮の顆粒層に見られるたんぱく質です。
ケラトヒアリン顆粒は、膜で包まれない不定形であることが形態的な特徴です。
成分としては、フィラグリンの元となるリン酸化したプロフィラグリンです。
リン酸化プロフィラグリンは、分子サイズが大きく不溶性です。
そのため、ケラトヒアリン顆粒は、その名のとおり、顆粒状です。
2)ケラトヒアリン顆粒と表皮
ここでは、ケラトヒアリン顆粒と表皮の関係をご紹介します。
表皮は4層から成り立っています。
皮膚の表面から、角質層、顆粒層、有棘層、基底層です。
<皮膚の断面図>
そんな表皮を構成する細胞は、ケラチノサイトと呼ばれる角化細胞です。
ケラチノサイトは、表皮の細胞の90%以上を占め、基底層で生成されます。
その後、だんだん皮膚表面に上がり、有棘細胞、顆粒細胞、角質細胞とその形を変えます。
そして、最後に角質層に留まったのち角片となり、肌から剥がれ落ちます。
この肌のサイクルがターンオーバーです。
ケラトヒアリン顆粒は、顆粒細胞に大量に含まれています。
しかし、顆粒細胞が角層細胞に移行すると、ケラトヒアリン顆粒はなくなります。
3)顆粒層にある層板顆粒
顆粒層には、ケラトヒアリン顆粒以外にも層板顆粒があります。
リン脂質、グルコシルセラミド、スフィンゴミエリンなどを含み、ミルフィーユのようなラメラ構造を形成しています。
そのため、層板顆粒と名づけられました。
層板顆粒は球形で、膜に包まれています。
健やかな美肌のためには、表皮のターンオーバーの正常化が大切です。
ケラトヒアリン顆粒や層板顆粒は、たった1〜2層の顆粒層にある小さな成分ですが、とても大切なはたらきがあります。
3.ケラトヒアリン顆粒のはたらき
1)バリア機能を守る成分に変わる
顆粒細胞は、ターンオーバーにより角質細胞に変化します。
<プロフィラグリンの変化>
プロフィラグリンがリン酸化された状態にあったケラトヒアリン顆粒は、角質へ移動するとフィラグリンに分解されます。
そして、それがアミノ酸に分解されて天然保湿因子(NMF)の主成分になります。
天然保湿因子は、セラミドや皮脂膜とともにバリア機能を守り肌の保湿を助けます。
<参考記事>
*保湿の3大因子は30代から不足する!エイジングケアでキープ
2)ターンオーバーや角化を調整する
ケラトヒアリン顆粒が変化したフィラグリンには、角層でケラチン線維の凝集を促進するはたらきがあります。
これはターンオーバーの最終プロセスです。
しかし、顆粒細胞は凝集反応が起こりません。
つまり、ケラトヒアリン顆粒には、細胞が生きている間は凝集しないように角化を調整するはたらきがあると考えられています。
3)紫外線ダメージを軽減する
ケラトヒアリン顆粒には、光を屈折させ反射させる性質があります。
そのため、肌の奥の真皮へ届こうとする紫外線のダメージを軽減するはたらきがあります。
ただし、これで紫外線を確実にカットできるわけではありません。
このようにケラトヒアリン顆粒は、コーニファイドエンビロープ(CE)やタイトジャンクションなどとともに、あまり知られてはいませんが、肌にとても大切なのです。
ケラトヒアリン顆粒のある顆粒層は、通常のスキンケアやエイジングケアで化粧品がケアする範囲ではありません。
しかし、このパーツは角質層に影響を与えます。
顆粒層やケラトヒアリン顆粒ほか、角質層の奥の状態を左右するのは、角質層だけでないことを理解しましょう。
そして、健康やアンチエイジングを意識した生活習慣で肌の内側からの美肌づくりを意識しましょう。
4.ケラトヒアリン顆粒と肌悩みや皮膚の病気
1)肌悩み
ケラトヒアリン顆粒は、肌と深い関係にあることがおわかりいただけたと思います。
この量が減ったり、異常をきたすと、フィラグリンが減って、天然保湿因子(NMF)も減ってしまいます。
そのため、皮膚常在菌バランスが崩れ、pHが弱酸性からアルカリ性に傾くことも。
その結果、乾燥肌や敏感肌、肌荒れなど肌悩みの原因になります。
また、皮膚の病気ともかかわってきます。
その代表が、アトピー性皮膚炎や尋常性魚鱗癬です。
2)アトピー性皮膚炎
2006年にケラトヒアリン顆粒から変化するフィラグリンの遺伝子変異が、アトピー性皮膚炎の重要な発症因子であることがわかりました。
アトピー性皮膚炎は、かつてアレルギー性の皮膚の病気として免疫学的な研究が多く進められ、アレルゲンの対策が治療の中心でした。
しかし、フィラグリンやセラミドの減少との関係がわかってきてからは、スキンケアによる保湿の重要性が唱えられるようになってきました。
3)尋常性魚鱗癬
尋常性魚鱗癬(じんじょうせいぎょりんせん)という遺伝性角化異常疾患では、ケラトヒアリン顆粒に異常があることがわかっています。
過度な角質化が進み、角質肥厚が見られる病気です。
顆粒細胞は空胞化し、ケラトヒアリン顆粒が減って粗くなっていることが特徴です。
<参照元>
*EL9-1 角化異常症 旭川医大 山本明美
<参考書籍>
5.まとめ
ケラトヒアリン顆粒とは何か、またそのはたらきをご紹介しました。
いかがだったでしょうか?
ケラトヒアリン顆粒とは、表皮の顆粒細胞にあるガラス質状の顆粒です。
バリア機能を守るフィラグリンのもととなるたんぱく質で、光を屈折させて紫外線から肌を守るはたらきがあります。
あまり知られていませんが、肌にとって大切で、これが減ると肌悩みや皮膚の病気の原因になります。
ぜひ、ケラトヒアリン顆粒について理解を深め、健やかな美肌のために活かしてくださいね。
この記事「ケラトヒアリン顆粒とは?バリア機能を支え紫外線から肌を守る!」が、エイジングケア世代の女性のお役に立てば幸いです。
著者・編集者・校正者情報
(執筆:株式会社ディープインパクト 代表取締役 富本充昭)
京都大学農学部を卒業後、製薬企業に7年間勤務の後、医学出版社、医学系広告代理店勤務の後、現職に至る。
医薬品の開発支援業務、医学系学会の取材や記事執筆、医薬品マーケティング関連のセミナー講師などを行う。
一般社団法人化粧品成分検定協会認定化粧品成分上級スペシャリスト
著作(共著)
(編集・校正:エイジングケアアカデミー編集部 若森収子)
大学卒業後、アパレルの販促を経験した後、マーケティングデベロッパーに入社。
ナールスブランドのエイジングケア化粧品には、開発段階から携わり、最も古い愛用者の一人。
当社スタッフの本業は、医学・薬学関連の事業のため、日々、医学論文や医学会の発表などの最新情報に触れています。
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